金賞(1作品)
旧来のインテリアは、内部から考えるスタイルでここ30年進められてきましたが、それはもう時代遅れであり、本作品は都市からどう内部に向かって居心地を重ね着するかに迫った意欲的提案であった。その点において高く評価できる。 (高柳 英明)
銀賞(3作品)
喫煙所の設置に関しては衆人の意見は分かれるであろう。しかしながら作者は、より高い視点からこの問題にデザインの果たすべき役割を提起しようとしている。近年ゼロ・トレランス・ポリシー(不寛容政策)によって、市民が分断されるような事態が世界各地で起きている。異なる意見を持つ人々が一つの社会の中で共生するために、「風景をつくる」という行為からデザインによる介入ができることを作者は示している。そのためには科学的根拠を示すことも重要であり、単に形を描くだけではなく、気流のシミュレーションも行っている。今後さらに「風景をつくる」というコンセプトから共生社会の実現を目指すデザインに取り組まれることを期待する。 (横山 勝樹)
作者の研ぎ澄まされた感性と確かな技術力によって作り上げられた完成度の極めて高い作品である。また作品そのものもさることながら、それがインテリア空間に与えるだろうと思える静謐な雰囲気も写真から十分に伝わってくる。多くの審査員が実物も鑑賞したいという感想を述べていた。ただ作者自身の作品ステートメントや、おそらくは試行錯誤の上でたどり着いただろうと想像するディテールを示した図面などが添えられていなかったことを残念に思った審査員もいた。展示会場ではないオンライン展示ゆえの制約でもあるが、鑑賞者からの要望にも配慮してもらえるとさらに良かった。 (横山 勝樹)
はじめに、手書きの優しく美しい色合いのプレゼンに惹きつけられた。本作品の対象地は、都心の密集住宅地であるが、その場所の無機質さや寂しさを課題とし、まちなみの改善を目的として建物自体に手を加えるのではなく、まちにある「はみだし行為」によってデザインされている点を評価した。「はみだし行為」は人為的要因による生活の痕跡と解釈できるため,言い換えれば,この作品は,まちをインテリア的視点である人間活動の現われによって再生しようと挑戦しており、戸建て住宅地の新たな再生手法の1つとなることを期待させた。加えて、フィールドサーヴェイによって「はみだしマップ」を作り、全体を丁寧にまとめあげた秀作である。 (山田 智彦)
銅賞(4作品)
本作品は、廃棄花を手漉き和紙と組み合わせることにより、壁装材へ転用するという素材開発の視点に新規性があり、花の自然な表情をインテリアへ持ち込む提案性が評価できる。また、素材化プロセスを自ら設計し、実験・検証を重ねた点はインテリア教育における探究的姿勢の好例であり、社会課題を創造的に解決する姿勢が示されている。
一方、壁装材としての耐久性や色変化に関する性能評価、廃棄花の種類による品質差の整理など、実用化に向けた検証が今後の課題である。これらを深めることで、素材研究としての説得力がさらに高まり、教育的にもプロトタイピングから社会実装までを見通す学びとなるだろう。 (金子 裕行)
一方、壁装材としての耐久性や色変化に関する性能評価、廃棄花の種類による品質差の整理など、実用化に向けた検証が今後の課題である。これらを深めることで、素材研究としての説得力がさらに高まり、教育的にもプロトタイピングから社会実装までを見通す学びとなるだろう。 (金子 裕行)
本来ブラックボックスとなる地域工場の段階的に計画された開放手法を評価した。段階的に開放される空間と、段階的に増える空間における人々の活動が緻密に計画されており、それぞれの空間の性質に真摯に向き合っている。人々の活動に着眼するからこそ、単に建物の改修デザインではなく、建物内部に人々の活動を取り入れて、新たに建物外部へ人々の活動が溢れ出る計画となっている。段階的に増える地域へ開放された空間が、少しずつ公共空間化するねらいであるが、開放空間と公共空間が等しく扱われており、人々の活動によってどのように公共性をもたらすかを考察したい。緻密な計画、質の高い模型とパースによる見ごたえのある作品である。 (山田 智彦)
峠の山道は、登山者でなければただの難所に映る。足場や見通し、天候に気を奪われると、自然がそっと差し出す微細な美には気づけない。作者がそれを「小景」と名づけたのは、自然の情報の密度が私たちの理解を超えるためである。本作品は、内部空間の体験を通じ、外部環境の微細な『気配』への感受性を回復させ、潜在する小さな美の再認識を促す。原初的な空間体験を想起させる点に新規性を認めた。文学的な語りや、雨や露を思わせる湿り気ある描画にも、気配を捉えようとする試みが感じられる。山道が人工物であることから、生態系を復元する『近自然構法』を取り入れると、さらに深みが増す。峠は人生の隠喩で、インテリアはその小景を示す静かな媒介となる。 (高月純子)
座ってもいいし、座らなくてもいい。だが『美味しそうな座り心地だねえ』という、今までになかったデザインの味わい方を示してくれている。これは将来のインテリアデザインを小さな殻に閉じこもらせるのではなく、より多様な方向へと導いてくれる嚆矢になるのではと考え、一押しの評価を与えた。 (高柳 英明)
特別賞(2作品)
障がいをもつお姉ちゃんが生活しやすく、さらに、お姉ちゃんを支える高齢化する両親と兄弟の生活にも配慮された家族愛溢れる優しい作品である。お姉ちゃんの日常生活を丁寧に人間工学的視点で記録し、お姉ちゃんに相応しい住空間のあり方を考察し、お姉ちゃんがいるからこそによる新たな自分の気づき、をまとめあげている点を高く評価した。作品の中で、住宅全体の設計と家族の様々な生活シーンは表現されているが、加えて、お姉ちゃんに相応しい仕上げや細部のあり方を表現できれば、より質の高い作品となることを今後の期待としたい。 (山田 智彦)
天井に届くほどのシンボルツリー〈願いの樹〉が、空間に確かな重心を与えている。教育課題で「社会との接点」を扱うときにはプロセスとしての実務の追体験を行うことが多い。しかし本作品で生徒たちが向き合った“社会”は、福祉施設の非営利法人から木材推進の協定企業、地域の住民参加者まで幅広い。その多層的な関係の中で、自分たちの行為が他者に影響を与え、応答を生み出す経験を積んだ点が印象的だった。背後には、地域との接点を丁寧に開いてきた指導体制の支えがあるが、その環境を生かし、対話と協働を形にしたのは生徒たち自身である。制作を通して、デザインが誰に届き、どのように社会へ作用するのかを実感できたことこそ、本作品の最も重要な成果である。 (高月 純子)
高等学校優秀賞(2作品)
民家の茅葺き作業にボランティアで参加した際、茅おろしで顔が煤だらけになり、眼鏡を外すと逆パンダのようになった事を思い出す。当初、模型制作によって伝統木造建築の理解がどこまで得られるのか疑問を抱いていた。しかし本作の縮尺1/25模型は、単なる外観の再現にとどまらず、合掌材の小屋組み、内部構成、職人技の要点を精緻に正確に示し、学習手段として高い有効性を示している。対象とした旧西岡家は郷土遺産であり、生徒が実物を確認できる点も理解を一層促す。制作過程は達成感や学習意欲を高めるとともに、地域建築文化への認識の深化にも寄与している。竈門や水屋、養蚕の棚などの内部空間の模型写真もパネルに示されれば、鑑賞者の学びや発見の楽しみがさらに広がったことだろう。 (高月 純子)
本作品は、インテリア科の学びの拠点である職員室を生徒自身が再構築しようとする点に新規性があり、学校空間をデザイン思考のプロセスを通して解決策を導いた点が高く評価できる。現状調査をもとに動線、収納、作業環境を整理し、利用者の行動に基づいた空間改善を行った点は、インテリア教育で重視される課題発見と解決のプロセスを的確に踏まえている。一方、予算や施工方法、家具仕様など実現性の検討には更なる深まりが望まれる。これらを補うことで、デザインの説得力が高まり、教育的にも「実際に使われる空間を設計する」という学びにつながるだろう。 (金子 裕行)
「第32回卒業作品展」審査委員会
横山 勝樹 学会会⻑/審査委員会 委員⻑
高柳 英明 第37回大会(関東・東京)大会実行委員会 委員⻑
山田 智彦 第37回大会(関東・東京)大会実行委員会 委員
金子 裕行 教育研究部会 部会⻑
高月 純子 表彰委員会 委員⻑
横山 勝樹 学会会⻑/審査委員会 委員⻑
高柳 英明 第37回大会(関東・東京)大会実行委員会 委員⻑
山田 智彦 第37回大会(関東・東京)大会実行委員会 委員
金子 裕行 教育研究部会 部会⻑
高月 純子 表彰委員会 委員⻑